室戸(高知)「花月」 自然が生み出す絶景と、絶品の酒・魚に酔いしれる

室戸(高知)「花月」 自然が生み出す絶景と、絶品の酒・魚に酔いしれる

2018年4月23日

日本八景のひとつ、四国東南端に位置する室戸岬。断崖絶壁に、奇岩が連なる海岸線と太平洋の荒波。かつては海の難所と呼ばれた場所です。

そして、そんな自然環境の中で育つ魚は絶品揃い。とくに金目鯛は西日本一の水揚げ地として知られています。沖にでればキハダなどの大型回遊魚が、磯の周辺ならばグレ(メジナ)、イサギ、真鯛、クエなど、あげればきりがないほど魚種に恵まれています。

全国から釣り人が集まりますが、魚で飲みたいノンベエも、一度は訪れたい憧れの地。

今回は、室戸の魚をめいっぱい楽しませてくれる、室戸岬漁港と目と鼻の先にある「花月」をご紹介します。

高知県室戸市にある「花月」へは、高知と徳島を室戸岬経由で結ぶ国道55号を使いますが、美味しい魚をおつまみに飲むのが目的ならば、選択肢は公共交通の一択です。

徳島駅からJR牟岐線の特急むろとに乗車し、終点の海部駅で第三セクター阿佐海岸鉄道に乗り換えます。1両編成、伊勢海老がイメージキャラクターの可愛い列車です。

わずか二駅で終点の甲浦駅に到着。

この先、高知県の奈半利町まで結ぶ計画があるようですが、果たして…。線路はぷっつり切れています。ここから路線バスに乗り換えです。

バス停は、海岸に流れ着いた流木かのような、ボロボロになった柱に時刻表がくくりつけられています。都会育ちには、もうこれで十分感動(笑)いい味だしています。

路線バス(高知東部交通)は鉄道に接続しているので、苦労することなく乗り換えられます。

駅前は特に商店などはなく、立派な甲浦八幡宮が見守ります。青い空と海、白い狛犬に南国の木々。

さぞかしオンボロバス(いい意味で)が来るかと思いきや、都市型バスで拍子抜け。

バスは甲浦を発車ししばらく走ると、ひたすら海岸線沿いを右へ左へカーブを繰り返し室戸岬の突端を目指します。

ユネスコにより世界ジオパークに認定された室戸岬一帯。ビロー樹やアコウなどの海岸植物が生い茂る光景は非日常的です。

台風中継でも知られる室戸岬は、灯台周辺が観光地化され、突端まで散策することが可能です。

残念ながら見切れてしまいましたが、右には海援隊長の坂本龍馬とともに活躍した明治維新の志士・中岡慎太郎像が太平洋を見据えるように建っています。

長いバスの旅を終えて、目的の室戸バス停へ。この一帯は室戸市役所をはじめとした行政機関や港湾施設、それらを囲む集落が広がる岬の中心街です。

かつてはクジラ漁やマグロで栄えた町。往時の賑わいを残す歓楽街は、”夜の街”愛好家としてたまりません。

歴史のある地域だけに、歴史を感じる建物が多い。その中でも一際立派な「花月」。1925年(大正14年)創業の料亭です。

料亭といっても、現在は昼は食堂、夜は地域に愛される居酒屋です。かつては下足番がいたであろう玄関と、お帳場が目に入ります。

客間のある二階へ上がると、廊下にはたくさんの魚類剥製が。すべて室戸で取れたものだそう。

開いた窓から、南風が頬を撫でます。「あぁ、ビールが飲みたい。」

客間がいくつもあり、広く席がとられているのでくつろげます。車で訪れた観光客の皆さんがキンメ丼を忙しく頬張るなか、私はのんびりと、一本目。

ビールはキリンかアサヒ。瓶はラガーで樽生が一番搾り。トトトと傾け乾杯!

他の皆さんのお目当てはキンメ丼や刺身定食。キンメ丼が1,800円で、山盛りに出てくるのだから人気なわけです。

私と、地元の漁師さん風のグループは、とりあえず刺盛りを注文。

みてください!この立派なお刺身たち。まぐろもキンメも当然地もの。

鯛、イサキ、ウメイロ、チイキ、カンパチ、ヒラマサ、ハマチ、石垣鯛、クエ、かさご、シマアジ、アカボ、タカサゴ、メンドリ…、刺身の内容は季節や水揚げの内容で変わるので、決め打ちはされていませんが、美味しいことは間違いありません。

刺盛りは1,500円くらい。ランチなので小鉢やお椀をつけたセットがいいですよ!と仲居さんに教わり、その通りに。

醤油も地元の旨甘な濃厚のもの。ねっとりしていて、これで食べると新鮮で”ブリブリ”な白身も魚の旨味が引き出されます。

「どう?美味しいでしょう」と仲居さん。「えぇ、もうたまりません。」と答えると、「ぬる燗とあわせたら最高よ」とのこと。わかっていらっしゃる!まさに”はちきん”といった感じの方。

もちろんお酒のつもりでした。飲み方はおすすめのぬる燗で。

お酒は土佐鶴。高知の銘酒。美丈夫(濱の鶴)も選べます。

猪口を口へ。きゅっと飲んで、米の旨味に笑顔がこぼれます。そして、またお刺身へ。

金目鯛の出汁でつくるお澄ましも絶品。耳をすませば潮の音。あぁ、遠かったけれど来てよかったとしみじみ感じます。

旅の先にある美味しい肴とお酒。室戸岬の幸を求めて、ぜひ出掛けてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

料亭 花月
0887-22-0115
高知県室戸市室津2586
11:00~13:30・17:00分~21:30(不定休)
予算3,000円