早稲田「源兵衛」 昭和元年創業、縄のれんの向こうに変わらぬ酒場がある

早稲田「源兵衛」 昭和元年創業、縄のれんの向こうに変わらぬ酒場がある

2018年4月11日

早稲田駅から徒歩7分ほど。早稲田通りに面した街角に突然立派な酒場が現れます。1926年(昭和元年)創業の源兵衛です。日暮れ前にもかかわらず、店内からは賑やかな声が聞こえます。

「やき鳥、シューマイ、天鷹」の看板が飲み客を誘います。縄のれんの向こう、老舗酒場を覗いてみましょう。

 

家族経営で、現在は4代目が中心となって店の歴史を紡いでいます。

渋い縄のれんの店構えに比べ、店内は古くともキリッとしていて清潔感があります。一枚板のカウンターに座り、まずは生ビールを注文し、店の空気で大きく深呼吸。老舗の人気酒場には独特な心地よい空気があります。

 

カウンターに数席、4人テーブルが2卓とこじんまりとした1階。奥には厨房がある他、二階は宴会用に使われているようです。

 

長年のお付き合いに対する感謝状がキリンビール東京支社長名で書かれ、店内に飾られています。一杯目は状態が抜群に良いキリンの生(650円)で乾杯です。

 

この樽生、実は一番搾りではなく、樽生キリンラガー。歴史ある酒場の樽生にガツンとしたラガー味がしっくりきます。

お酒のメニューは老舗らしくシンプル。袖看板にもある通り酒は天鷹を推し、灘の定番・菊正宗が補完しています。

 

A4一枚の品書きで、裏面に食事が並びます。営業時間は16時からと酒場寄りながら、メニューにはラーメンやとんかつライスといったガッツリ系の食事も豊富です。世代交代ごとに、洋食、魚料理、焼鳥と増えてきたと聞きます。オムライスは不動の人気メニューで、茶碗三杯分。体育会系の胃袋も満足させそうです。

 

壁にぴしっと掲げられた短冊もかっこいい。

 

坂の街・早稲田。ぽかぽか陽気のなかを散策した後は、冷奴(450円)と生ビールできゅっと冷たいもので体を冷やしたい。ぷりっとした濃厚な絹ごしを頬張り、ラガー生をすかさず喉へ。

 

カウンターの内側にある小さな調理台から登場するのは、看板にも書かれた店の定番シューマイ(350円)です。初代がつくった店の大定番。ほくほくながら、噛むとカニやホタテの風味もある餡からじゅわっと旨味が膨らみ出ます。なんでも、鶏の骨についた肉を削ぎ落として固めたのが始まりだとか。これがビールだけでなく日本酒を誘う素敵な旨味。

 

天鷹は栃木県大田原のお酒。辛口ながら、飲むごとに米の旨味を感じ、しっかりとした輪郭のある味わいに変化します。

 

そんなきりっとしたお酒には、焼鳥を。女将さんが注文ごとに一本一本丁寧に焼くもので、1本単位で注文(最低2本からで2本350円)可能です。正肉、砂肝、レバー、鶏皮、つくねの変わらぬ顔ぶれ。

 

アルバイトで厨房に立つのは、もちろん場所柄、早大生。しかも応援部所存だそうで、非常にピシッとした好青年です。周囲のお客さんも現役、教授にOB・OGでいっぱいです。早大生でない私も、このキリっとした雰囲気にほっこり癒やされ、もう一本。次はラガー瓶。

 

自家製のつくねはコリコリとした食感が楽しい旨味たっぷりのもの。とろっとした甘タレとよく合い、余韻がビールを誘います。

 

早稲田の街に変わらぬ景色あり。夜の帳がおりるころには、ぼんやり光る明かりを求めてやってきた、いつものお客さんでいっぱいになりました。歴史のある酒場でリラックス、いかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

源兵衛
03-3232-6635
東京都新宿区西早稲田2-9-13
16:00~23:00(毎月3・13・23定休)