茅場町「もつ焼きミナト」 こだわり大将とほっこり女将さんの空気感に癒やされる

茅場町「もつ焼きミナト」 こだわり大将とほっこり女将さんの空気感に癒やされる

新川といえば江戸で最大の酒市場だった街。江戸時代には新川を目指して、灘の下り酒をいかに早く届けるかと、新酒の季節は酒蔵が一番舟を競ったそうです。

現在も酒問屋の日酒販や、酒造では白鹿の辰馬本家酒造やキンミヤでお馴染みの宮崎本店の東京事務所など、変わらず酒類関係の企業が集中しています。2013年6月までは大手ビール会社・キリンHDの本社があったことでも知られています。現在も茅場町はキリンの事務所があります。

酒の街で働くお酒のプロたちが普段から愛用する酒場は新川・茅場町に多く、「もつ焼きミナト」もそんな一軒です。

 

この界隈は路地にもぽつぽつと提灯が灯り、馴染みのお客さんで静かに賑わっている店が豊富にあります。「もつ焼きミナト」は2013年10月のオープンながら、すっかり街の景色になっています。

店先の看板にある「おつかれさまセット」は、はじめての人だけでなく、常連さんもまずはこれと頼む定番です。

 

焼台に向いてL字のカウンター。大きく分厚い一枚板に驚かされます。寿司店からの居抜きだそうですが、実に素敵な雰囲気です。グループ向きの小上がりは4名卓が2つあります。

 

新川で仕事をして何十年というご主人。もつ焼き屋を始める以前から、この街でクリーニング店を経営されています。現在もお昼にクリーニング店、夜はもつ焼きという2つの顔を持たれています。

注文に合わせて、慣れた手付きで串打ちを開始。仕込みの時間があまりとれないから…とおっしゃいますが、目の前で打ち立ての串を焼いてくれる嬉しさがあります。

 

千円のセットは生ビールも注文可能。状態抜群の一番搾り生ビールで乾杯!

 

セットの小鉢はお漬物、もしくは冷奴から選びます。生ビールをぐいっと飲んだあと、少し息を整えてポリポリとお漬物を食べれば、「あぁ、一日が終わった。おつかれさま。」と感じます。

 

炭火で一本ずつ、食べるペースに合わせて焼いてくれます。セットの内容や味はおまかせが一番。

 

生ビールのあとは瓶ビールで。キリンクラシックラガー(中びん690円)の苦味は酒場の味。

 

よいモツが手に入らないと店を開かないというくらい、モツへのこだわりがある大将。毎朝バイクで仕入れに行くそうですが、昼の仕事も考えると想いがなくてはできない労力です。

レバーの食感が苦手という人にもおすすめしたい、ぷりぷり系のすっきりとしたレバー。甘めのタレとの相性もよいです。

 

モツは芝浦のお世話になっているところから。鶏は築地の宮川食鳥鶏卵からだそう。いい食材とこだわる大将の焼く串は納得の美味しさです。

 

カシラ、レバー、タン、ハツ、シロなどの定番の串は1本100円。1本単位で頼めますので、一人飲みで軽くつまむのにもちょうどいいです。

 

女将さんの手作りポテトサラダは絶品。派手さはなく、ごく普通のものと笑って話す女将さんですが、いやいや、この味のバランスや粘度は実にいいものです。通常は580円ですが、半分(写真)という注文もできますから、ぜひお試しあれ。

 

すぐに東京に出てきたものの、ご出身は北海道と話す大将。清酒男山生もと純米酒、お酒(600円~)は北海道の銘柄を推しています。

 

セットの5本が終わりましたので、続けて食べたいものを一本ずつ。まずはシロをタレで。シロの処理はお店で行い、茹でた塊からささっと切り分け火に当てます。七味ではなくカラシがおすすめとのことで、頬張ってみれば頷きながら笑みがこぼれます。

 

この鳥ナンコツは自信の1本。やげんの周囲にたっぷりと肉を纏ったままのもので、これまであまり食べたことがないようなジューシーさ。骨の周りが美味しいのは鳥も同じです。

 

珍しい樽詰めのチューハイ。キリン樽詰サワーは御殿場のキリンディスティラリーでつくられる富士山の伏流水のサワー。ほのかに香るフレーバーで控えめの甘さですいすい飲めます。

 

食に関する本が並び、大将の趣味も見え隠れする店内。ご夫婦の阿吽の呼吸もあったかい雰囲気です。

しっかり美味しく、しっかり癒やしてくれるサラリーマンの街になくてはならないいい酒場。なんでも、酒類関係者の女子会も開かれるとか。

キリンビール、赤猿などの芋焼酎をつくる小正醸造、シャリキンの宮崎本店、お酒の顔ぶれに新川を感じます。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

ミナト
03-6661-6672
東京都中央区日本橋茅場町2-14-5
17:30~22:30(土日祝定休)
予算2,800円