徳島「安兵衛」 阿波の味、ぜんぶ入り!朝からやっている定番の大衆酒場

徳島「安兵衛」 阿波の味、ぜんぶ入り!朝からやっている定番の大衆酒場

徳島の大衆酒場と言えば、創業半世紀を迎える駅前の店「安兵衛」はまず外せません。朝から通しで営業、価格は庶民的、そして阿波の地ものが勢揃いと惹かれる要素は四国でもピカイチ。早い時間から大賑わいの店内は、入れ代わり立ち代わりで次々人々が集まり、閉店まで元気いっぱいの接客と笑い声が続きます。

今回は久しぶりの徳島へ、安兵衛を目指して旅に出ました。

 

徳島へは高松駅からJR高徳線の特急うずしおで1時間の旅路。東京からは航空機、関西からは高速バスが便利に結んでいますが、讃岐山脈を抜けて徳島平野を快走する特急列車で飲むお酒もいいものです。

 

ほろ酔いで到着した徳島駅。駅前にはそごうが元気に営業中。眉山の麓まで続くヤシの木が徳島駅前のシンボルです。

 

駅前ロータリーを抜けて左へ一本路地を入った所にあるのが「安兵衛」。10時30分の口開けから人が集まり、昼頃には昼食組と昼酒組でいっぱいになります。鳥、活魚の文字の通り、徳島の二大ご当地食材の魚と鳥が楽しめる酒場です。

 

厨房に向いた長いカウンターと、その先にはテーブル席。職人さんも給仕スタッフも人数が多く、その人気ぶりが伝わってきます。「さぁ、何にしましょう、なんでもつくりますよ!」と気迫すら感じます。

 

A3をラミネート加工した飾りのない品書き。大衆酒場はこれで十分ですし、みていてこの方がワクワクします。昭和40年創業、徳島県推励鱧料理指定店の文字も誇らしげ。ビールは四国でお馴染みの顔ぶれ、キリンとアサヒ。1Lジョッキ910円でぐいぐい飲みたいけれど、徳島の酒・三芳菊が待っているから大瓶にします。

 

老舗のカウンターに麒麟ラガーラベルの馴染み具合は相当なもの。トトトと注いで乾杯。

 

料理の種類はとにかく豊富。アンコウにふぐ、鰻にうつぼ、よこわに鯨となんでもござれ。さらに地鶏の阿波尾鶏が加わり、何を食べようか決めていなくとも安兵衛にいけばなにかあるという状態です。

 

手元の品書きだけ見ていると見逃すものも。店中に貼られた品書きを体をひねってぐるりと見渡します。

 

カキアライにあんきも、そして瀬戸内の岩礁で釣れるグレ(メジナ)など、一回二回飲みに来たくらいでは到底追いつけない並びです。

 

脈絡がなさそうで、なんとなくあるようにも見える…これぞ酒場短冊の魅力。

 

安兵衛といえば、食べておきたい鶏のきも焼き (390円・税込)。ぷりっぷりの鶏レバーの甘辛炒めです。こりこりとした食感も混じり、香ばしさと鳥のコクにビールがぐいぐいと引き寄せられます。

軽く茹でたキャベツが付け合せで盛られ、このタレにつけて食べるとキャベツも十分に酒の肴です。

 

鳴門の鮮魚と鳥料理、両方食べたいのは山々。でもこちらは店名通りに安く、そしてなによりボリューム満点。一人ならばせいぜい2品が限界。魚は次回の楽しみにして、今宵は鳥づくし。鳥の鮮度が良いからか溢れんばかりの肉汁を蓄えた手羽先。

仕事帰りのジャンパー姿のお父さんたち、出張慣れしたスーツ姿で手ぶらの会社員。一人、二人のお客さんが楽しく過ごすカウンター。テーブル席では近所の奥様方も宴会中です。

 

生け簀には活うな重の文字と元気な鰻たち。あちこちにベクトルを向けた料理がどれも主役と言わんばかりに並びます。何度も通って上手に使いこなせるようになりたい。

 

鳴門鯛のお燗酒をきゅっと飲んで、お会計。お通しなしで二千円でお釣りが来る…。地方都市の酒場の魅力を改めて感じたお店でした。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

安兵衛
050-5592-7414
徳島県徳島市一番町3-22
10:30~21:30(年末年始以外無休)
予算2,000円