松山市「綱元」 これぞ漁師酒場!深浦漁港から届く活魚に圧倒的な価値を感じる

松山市「綱元」 これぞ漁師酒場!深浦漁港から届く活魚に圧倒的な価値を感じる

2018年1月12日

従来からの繁華街とは異なる場所に松山で魚を食べるならここ!という酒場があると聞いて、愛媛取材の間にどうしても訪問したくやってきました。

漁師小屋を彷彿とさせる店構えは、知らなければ魚介卸の事務所かなと勘違いしてしまいそうなほど。アルミサッシの色気のない扉の向こうにはなにやら巨大な生け簀が並んでいます。その光景もまた業務用そのものなのです。

こんな佇まいだからきっと市場か港の側かと思いますよね。

 

実はお店の目の前は地元私鉄の伊予鉄郡中線の線路が通り、時より帰宅客を乗せた電車が行き交っています。

 

なんとも不思議な立地、それでも市中心部の松山市駅からは徒歩6分ほどで、それだけ歩いて飲みに行く価値は十分にある特色ある酒場です。

 

酒場なのに店に入っても椅子や厨房は視界に入らない。そこら中に業務用の水槽が並び、美味しそうな活魚が所狭しと泳いでいます。

 

無造作におかれたトロ箱には、これまた目が輝いている見るからにものがよいアマダイやサワラが入っています。ひおうぎ貝やネレ(カンパチの幼魚)の姿も。

 

まだ席は見えてきません。お店の方が「いらっしゃい」と気づいて声をかけてくれましたが、席につく前に圧倒的な眺めに魚喰いの心がうずきます。

ウツボまで泳いでいます。

 

ここ網元はその店名の通り、有限会社向田水産という水産会社の直営店でまさに網元というわけ。愛南の深浦漁港で水揚げされる魚介類を毎日運んでいるそうです。

もともとは魚屋として店を出していたそうで、店先のその場で刺身にしてビールを提供する「魚屋角打ち」のようなスタイルを行っていたところ、それが人気となり増築を続けて今の形になったそう。

漁師であり、卸であり、魚屋であって酒場でもある。漁港までいくことでできる楽しみが、ここなら市街中心部に居ながら楽しめます。

 

やっと席がみえてきました。一人飲みの大テーブルや小上がり、4人テーブルなど無造作に席が並び、皆さん思い思いに飲んで食べて笑っています。地方都市の酒場のこういうゆったり雑多な雰囲気の酒場が好きでたまりません。

 

ビーメは瓶でアサヒとキリン。生ビールはサントリーです。お店の名前を冠したオリジナル銘柄「網元」は4合で2,580円。どっしり構えて4合瓶を空けますか。

 

西条の銘酒・石鎚や賀儀屋なども用意あり。ベテランのお父さんたちは麦焼酎のボトルをとってお湯割りで延々と飲んでいます。いいなー、あんな歳のとり方をしたい。

 

続いて気になる料理。店先に泳いでいる魚がそのまま料理になりますので、姿をみて決めるのもプロっぽくて楽しい。

瀬戸内と豊後水道と交差する愛媛の海はとにかく魚種が多い。きびなごからカツオ、はたの刺身まであります。名物はは愛南町の御荘湾沖で豊後鯖を畜養までしている同社の鯖をつかった料理。

鯖のコースもあり、一匹つかって2,980円は一人前から注文可能です。刺身にしゃぶしゃぶ、煮付けから汁までついてこの価格は魚好きならばぜひ試したい。

 

うすばはぎ、アマダイの塩焼き、真鯛のかぶと煮、あぁ、全部食べたい。

 

中四国はキリンラガー、とくにクラシックラガーを見かけることが多く、こちらも風格あるラガーが楽しめます。木造の漁師小屋でぷりぷりと刺身に瓶ビール、何十年も変わらない日本の風景です。

では乾杯!

 

お通しは牡蠣のしぐれ煮。ビールの吸い込みが一層高まります。

 

一匹姿づくり(2,800円)。鯖の姿造りなんて珍しい!眩しいほど輝いています。

 

残念ながら蛍光灯の下なので寒い色になっていますが、これもまた漁師酒場らしさ。しめ鯖が定番の大衆魚ですが、活鯖の刺身は別格です。ボリューム満点、二人で飲みに来ていますがこれでだいぶ満腹になります。

 

甘めの醤油にちょんとつけて、わさびを軽く添えて口へ運べば、ほっぺが落ちそうなほど美味。脂が濃厚で甘さがあり、余韻は驚くほどすっきり。活魚なのでクセもなく次々と箸が進み、ビールや日本酒も進みます。

 

かつおは藁焼きで。店の中央に置かれた焼台では藁の強い火力で一気に表面を焼き上げていきます。たたきもボリュームがあって1,380円。ここは空腹で来ないと食べたいものを前にして諦めることになりますので、一軒目にどうぞ。

 

“決定版!チョーさんの釣り情報|テレビ愛媛”のチョーさんこと長島幸雄さん。愛媛で日曜朝6:30から放送の長寿釣り番組に出演されている方で、偶然にも飲んでいらっしゃいました。魚釣りのプロも通うお店、さすがです。

地元のお客さんで賑わう店内、出張や旅行で立ち寄る人も混ざって、美味しい魚に囲まれて楽しい時間を過ごしませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビール株式会社)

 

居魚屋 網元
089-933-8308
愛媛県松山市北藤原町2-1
17:00~24:00(基本無休)
予算3,200円