松本「鳥心」 押しも押されもせぬ焼鳥名酒場。横丁の先にある楽園

松本「鳥心」 押しも押されもせぬ焼鳥名酒場。横丁の先にある楽園

2017年10月28日

信州松本はアルプスの清流に抱かれた自然と、安土桃山時代より建造された国宝・松本城を中心とした歴史と文化が交じる都市。文化と水がある場所に銘酒と銘店あり。松本の夜は魅力あふれる酒場を巡りましょう。観光名所では感じ取れない、今を生きる人々の息遣いが聞こえてくるはず。

駅前のビル内横丁のどんつきにある「鳥心」は地元のノンベエに愛さる鳥料理専門の大衆酒場。親子二代で通う常連も多い老舗です。

大都市では消えかけている昭和の飲み屋街が現役で、しかも活き活きとしています。鳥心の看板もどこか旅情が感じられます。

炭火焼きの焼鳥台を中心とした厨房を囲むコの字カウンターだけの店。隣の人とも距離が近く、飲み始めと同時に一期一会の会話が始まります。毎日その日の分を仕込む鶏は新鮮そのもの。「美味しいものを食べてもらいたいから毎日仕込んでいるよ」と大将。

串は一本160円から2本単位で頼めます。メニューはこれだけ。焼鳥、銘柄鶏、唐揚げに〆ごはん。それでも、連日夜6時にもなれば常連さんが押し寄せてあっという間に満席になる人気ぶり。秘訣はなんといっても、鶏の鮮度と備長炭で焼いた焼鳥の美味しさです。

ビールは生樽でキリン一番搾り。瓶ビールでアサヒも選べます。そして、地元信州の銘酒は大雪渓など定番銘柄が1合400円。純米酒や瓶詰め山清などの地場消費銘柄も600円から850円とリーズナブル。

キリン一番搾りで松本に乾杯。

お通し300円で一通りぞろぞろやってきます。キャベツやお漬物のほか、女性にはサラダがサービス。「野菜をしっかり食べてね」と笑顔が素敵な大将に言われたら、それはもう何軒目であってもぺろりです。

鶏の鮮度の自信あり。「鶏わさ食べる?美味しいよー」と言われ、もちろん二つ返事。もちもちで噛むほどに旨味が広がり、わさびとタレが味を引き締め絶妙な味わい。余韻にビールが飲みたくなることは言うまでもありません。

短冊状になるようにぎゅっと打たれた鶏。表面はかりかりなのに噛むと豊かな鳥の脂が口に広がりコクがあります。甘めでとろみのあるタレに炭火の香ばしさが加わり、もうたまりません。筑摩の地酒・山清をお燗で一合(400円)をもらって、ちびちびと。

手羽先は塩で。テーブルにセッティングされた薬味はすりおろした大蒜とガーリックチップ。塩焼きには大蒜をつける食べ方で、八ヶ岳の麓で大蒜を育てている長野県ならでは。レモンハイとあわせて、心地いい組み合わせ。

地元のサラリーマンやご隠居さん、近隣の飲食店で仕事を終えた飲食業の方など客層は様々ですが、感じのいい人ばかり。大将の人柄が店全体を包んでいます。

コの字カウンターで過ごす楽しい時間。皆さんも郷土の味と人情を肴に一献いかがですか。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

鳥心
0263-36-9757
長野県松本市中央1-2-24
17:30~24:00(日・第1・3月定休)
予算2,800円