小倉「大太鼓」 居酒屋を愛するものならば、とろけてしまうだろう


酒場の魅力の一つに、空間の色っぽさというものがあります。脈々と街の変化の中で受け継がれた飴色の空間。わかりやすく言えば、「レトロ」や「年輪」という言葉になるのですが、絵に描いたような昭和の風情がよいのではありません。

作り物の昭和ではつくれない、長年に渡り飲んできた人々の息遣いが聞こえてくるということ。そして、まさに今の今にあっても、毎晩、多くのお客さんが笑い、語り合い、酔っていく現在進行系の現場であることも、酒場の色っぽさには必要不可欠です。

老舗酒場の色気というのは、女性視点でいえば、年上の男性の魅力のようなものと筆者は思います。

 

そんな老舗酒場を愛でるものは、小倉の「大太鼓」は間違いなく惚れてしまうはず。わざわざ、大太鼓で飲むためだけに福岡・博多から新幹線で小倉に来たというと笑われそうです。

小倉は、JR小倉駅を境に、北はすぐに北九州工業地帯で、南が繁華街となっています。大太鼓もある鍛冶町は小倉最大の歓楽街です。

鍛冶町という地名は、ご想像の通り鍛冶職人が多く住んでいたからで、米町や魚町、船場、馬借といった古い地名が現在も使われています。

紫川を挟んだ対岸に小倉城があり、これらの地名は城下町ならでは。駅から大太鼓までは10分ほど。街の歴史や背景と重ね合わせて、歓楽街を散策したい。

 

1968年創業、小倉を代表する酒場・大太鼓。大きな建物に小さな間口。この店構えだけでも飲めそうと話したら、笑われました。

 

カウンターのみで36席。予約はできません。店の中は中央の壁で通路以外は仕切られていて、まるで鏡のように同じ作りのカウンターが二本伸びている独特なつくり。全体でみれば大箱なのですが、座ってみると中央の仕切りを背に15席程度のカウンターしか目に入らすまるで小箱酒場のよう。

厚みのある板と丸太の椅子、内装の木材から鈍く光るニスの輝き。たまらない。

 

夏場でも主体は変わらずおでんで、サイドメニューのおつまみも充実しています。

 

そういえば、熊本や中洲にもおでん酒場の老舗がありますが、九州の酒場の一種の特色なのかもしれません。

 

価格帯は、店の雰囲気から感じるよりも一回り安い印象。東京や大阪の酒場とも違う顔ぶれに期待が高まります。おでんに次ぐ名物はポテトサラダやゴマサバ、深夜までやっていることから夜中はおにぎりがよくでるそうです。

 

ビールはサッポロビール。1999年まで門司にはサッポロビール・西日本地域の製造拠点として稼働していた九州工場があったことから、他社が強い九州地域において、特異的なサッポロの強さがみられます。生ビールは黒ラべル、瓶では赤星、大手3社も選べます。

そして、なんといっても焼酎が豊富です。九州男児は、親から焼酎の指定銘柄を引き継ぐなんて話を聞いたことがあります。あなたは白波ですか。それとも和ら麦?

 

ガス圧がわずかに高めですが、それが今の季節にちょうどいい爽快感。大太鼓の生ビールは抜群のクオリティです。太鼓判をおしたい黒ラベルで乾杯!

 

同席のビールの営業マンが、オニオンスライス(330円)を頼んでいたのですが、出てきたものに驚きました。玉ねぎの上に鰹節、じゃこ、ねぎ、そして生の卵黄を載せたもので、これをかき混ぜて食べる。見た目も美しく、一品の仕事の素晴らしさに感動します。

 

老舗のカウンターに赤星が実にしっくりきます。昭和の一コマといっても全く違和感がない。

 

冷奴(220円)をつまみに瓶ビール。豆腐は固く立派。もう、語る必要のない大定番。

 

福岡県の土地の味と言えば、やはりごまさば(480円)です。刺身は他にないのが、またカッコイイ。ここのごまさばのファンという友人に「小倉まで飲みに行って食べるべき」と毎度言われていたのですが、その理由がわかりました。ぷりぷりで脂の甘さと醤油のコクと旨味が混ざり美味。筆者もごまさばは結構食べてきていますが、これは強くおすすめしたい一品。

 

さて、そろそろおでんへ。定番の大根はもちろん小倉産の春菊、大分のしいたけなど土地の食材が揃います。定番の玉子や厚揚げ、すじもおすすめだそう。

 

おでんには、少し風味を変えてアンバービールの琥珀ヱビスを合わせてみるのも楽しい。ロースト麦芽によってコクと香ばしさがでているので、おでんの中でも油をつかったものとよく合います。

 

おでん出汁は鶏ガラを基本としていて、あっさりとしながら動物性の旨味がよく滲み出ています。創業当初からの継ぎ足しと、丁寧な出汁の維持・管理が美味しさのポイントだそう。

 

春菊は地元のもので、何を食べようか悩んでいるときに「これを食べていって」とおすすめされたもの。青味と苦味に出汁が程よく絡まり、大人の味覚を刺激する美味しさです。あぁ、これは焼酎もよいし、ウィスキーデュワーズソーダも合いそうです。

 

トマトのおでんは、最後お皿のおつゆをすべて飲み干すほど気に入った一品。小倉へ飲みに行く際は、仕事の取材飲みは置いておき、まずは一軒目に立ち寄りたいと思わせてくれた酒場です。

空間よし、料理よし、そしてもうひとつぜひ紹介したいのは、アルバイトの男の子たち。いえ、イケメン好きとかそういうのではなくて、爽やかで俊敏で好青年とはまさにこの人たちといったお兄さんが接客をしてくれます。

代々、地元の大学の体育会系が先輩から後輩へと、ここのアルバイトを受け継いでいるのだそう。

小倉の酒蔵大太鼓は、福岡出張や旅行の合間に立ち寄る価値十二分にある素敵なお店です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/サッポロビール株式会社)

 

大太鼓
093-551-3805
福岡県北九州市小倉北区鍛冶町1-3-21
17:00~翌2:00(日祝定休)
予算2,300円



“小倉「大太鼓」 居酒屋を愛するものならば、とろけてしまうだろう” への1件のコメント

  1. おのっち♪ より:

    惚れ惚れするよな銘店ですね、
    プロ、ありがとうございました(^-^ゞ

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