大曽根「みのや北村酒店」 酒屋は笑顔を売る処。明るく楽しく心地よく

大曽根「みのや北村酒店」 酒屋は笑顔を売る処。明るく楽しく心地よく

お酒は楽しくほどほどに。

酒造会社のポスターによく書かれている適正飲酒の文言ですが、やっぱりお酒は楽しく飲まなきゃいけません。酔って忘れたいこともあるかもしれませんが、お酒は日常に潤いと笑顔を与えてくれる最も身近な嗜好品です。飲む人だけでなくて、お酒を造る人、お酒を売る人も、楽しくなくちゃ。

名古屋の大曽根、ナゴヤドーム近くにある「みのや北村酒店」は、お酒をコストパフォーマンスやうんちくで売るのではなく、なにより楽しく飲んでほしいということを前面に掲げています。

 

朝の8時30分からオープンする街のお酒屋さんで、営業時間中はいつでも店内飲酒、つまり角打ちが楽しめます。創業は1938年(昭和13年)、大曽根で長く愛されているお酒屋さん。

いまでも調味料の量り売りを続けていて、醸す系の全般のプロフェッショナルとしての誇りや意地のようなものが感じられます。筆者は幼い頃からお酒屋さんが好きでご近所の馴染みのお店に出入りしていましたが、当時は味噌、醤油、塩なんかは酒屋で買うものでした。味噌は樽に入っていて、量り売りしてくれるのも昭和の酒屋には当たり前で人情があり素敵でしたが、いまや量販やコンビニの独擅場ですね。

 

あくまで小売の酒屋であるという姿勢ではありますが、立ち飲みの人も隅に追いやられるわけではなく、どちらもお酒を楽しむお客さんとして親切に接客してくれます。

 

立ち飲みの掟は厳しい。酔っぱらっても最低限のマナーは大切です。だってパブリックな場所なのですから。お酒屋さんで飲むわけなので、お酒の種類は大変豊富。生ビールとして琥珀ヱビスと黒ラベルが用意されていますが、その他の缶ビールも飲用可能。日本酒、焼酎もバリエーション豊かで、地元愛知のお酒は三代目主人の北村彰彦さんのこだわりがあるものばかり。

 

珍しいところで、店内の一角に本棚があり、店内で飲みながら読むことが出来ます。結構真面目な本もあれば、酒場やお酒関連のムック本もあり、一人で飲んでいても寂しくない。いえ、むしろ本がある以上に、和やで人懐こい店主や女将さんのトークのほうが楽しいです。お酒を楽しく飲んでいってね、という想いがとてもうれしい。

 

ジョッキは違いますが、ビールはサッポロ黒ラベル。グラス190円から用意されている生ビール、日本酒を飲みに来たという方もこれなら軽く一杯喉を潤してもよいのでは。乾杯!

 

店内に並ぶお菓子やお惣菜がおつまみになります。割り箸代20円を支払って、気になるおつまみをつつきましょう。

 

人気は、お店自家製のスモークベーコンと生ハムで、1皿250円から食べられます。燻製釜を使って店の前で燻しているそうですが、「手間をかけたらかけた分だけ美味しくなるし喜んでもらえるから」と、苦労を惜しまない北村さん。スモークチーズももちろん自家製です。

 

6Pチーズや缶詰、カニかまぼこなどのちょっとした系も揃っています。

 

そして、なんといっても一枚看板はこの樽にはいった本生原酒「田村」。

福島・金寶酒造仁井田本家による福島県産無農薬酒米使った純米吟醸で、全国で数えるほどしか扱えない貴重なお酒です。

 

量り売りだけでなく、もちろん角打ちとしていただけます。本生原酒は扱いが難しい、お酒のプロがいるからこその価値がここにあります。

 

お店の向かいには電機メーカーの製造事業所があり、また近隣にも古くから通う常連さんが多いそうで、典型的な定番酒の存在も大切にされています。月桂冠カップ酒、大関ワンカップに日本盛鬼ごろし。単に安い酒というのではなく、常連さんたちと酒屋の長い関係の中にずっとあるキャラクターのようなものですから。

 

クラフトもあれば、ナショナルもある。ビールは仲良く大手4社勢揃い。

 

ワインもずらりと並び、グラス売りもやっています。

なにより楽しんでもらうことが大切、お客さんをワクワクさせる酒屋でありたいというご主人の想いが伝わってくる数々。さらには店内でライブイベントを開いたり、なやばし夜イチで日本酒まつりを企画開催する活動までされています。

とにかく元気で活き活きとした角打ち酒屋さんのみのや北村酒店。お近くの方はぜひ一度覗いてみてはいかがでしょう。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

みのや北村酒店
052-722-0308
愛知県名古屋市東区矢田1-5-33
8:30~22:00(日定休)
予算1,000円