新橋「出世酒場 大統領」 規律を守って美味しく気持ちよく

新橋「出世酒場 大統領」 規律を守って美味しく気持ちよく

2017年5月1日

世間には様々な条件付き酒場があります。ただ、そういう店は”入りにくい酒場”というわけではなく、条件さえ満たせば案外普通の居酒屋よりも心地よくて、気づけば通いたい店の一軒になっていたりするものです。

新橋でもっとも条件が厳しい酒場と言えば、出世酒場「大統領」ではないでしょうか。

カウンター中心のいわゆる大衆やきとり酒場のつくりなのですが、お一人様はお断り。お酒が飲めない人もお断り。飲み終えて長居する人もお断り。

なかなかハードルが高いではありませんか。え、当サイトを御覧頂いている皆さんには余裕の条件ですって?(笑)

ちなみに、女性だけのグループでも入れますので、ご安心を。

アルコールの追加注文がなくなり次第お会計!の文字が力強い。混雑時長居無用とのことで、いくら飲み続けられる方でも、ほどほどで切り上げて大人のちょい飲みを。

豚もつ系のやきとり屋が多い新橋にあって、ここは鶏肉の焼鳥を提供します。飲み物はビールがキリンで、そのほか酎ハイ類が豊富です。

昭和レトロの味わいのある文字がたまらない。こんなフォント、モリサワさんつくりませんか?(笑)

お店の条件は厳しいですが、お店の人は実直・丁寧、ルールを守る方ならば心地よく接してくれます。

キンミヤはシャリキン(甲類をシャーベット状に凍らせたもの)を使っていて、梅割りやホッピー、バイスなどの東京の酒場のローカルな割り材で楽しめます。

なにはともあれ、乾杯を。大統領の生はキリンラガー。一番搾りやハートランドではなく、ラガーというのがいい。ものすごい繁盛店で、一日に何回転かしますので、とにかくビールの鮮度が抜群にいい。さらにディスペンサーもよく管理されていますので、ベストな生が楽しめます。

一杯目、ちょっと高く感じても生がおすすめ。

串は一歩150円から。焼けるまでの間、煮込みや冷やしトマト、ガツ刺しなども頼んでおきましょう。注文が集中すると、焼き方のお兄ちゃんがいかにプロフェッショナルとはいえ、ちょっと時間がかかります。焼けるまでの間も、店の活気やガヤガヤを肴にお酒が進みます。

突き出しは300円の大根おろしとうずら。お代わりは自由。焼鳥屋といえば、大根おろしが基本です。串につけて食べても美味しい。

煮込みはすっきり仕上げた鳥もつの煮込み。豚もつの煮込みが苦手という方にもおすすめしたい、美味しい一杯。豆腐は盛り付けの直前に煮込みと混ざるので味は染み込んでいませんが、濃い味の味噌つゆと合わせて丁度いいあんばい。ビールやホッピーが進みます。

串の味付けはおまかせで。辛味噌をつけていただきます。ぼんじりのコリコリ感と肉汁したたるぷりぷりの身が素晴らしい。雑多な空間ではありますが、ここの焼鳥はわざわざ食べに来る価値ありです。

イチオシはつくね。どうですか、このみたらしの具合。ふわっとした中にも肉の旨味がつまっていて、醤油多めのタレと絶妙にマッチします。

そんな焼鳥には梅割りを。シャリキンがかき氷のようにこんもりと盛られてやってきます。ここに箸先で穴をぐりぐりと空けて、そこに梅エキスを垂らしていきます。

エキスは2種類あるのが珍しい。二種類混ぜてニヤニヤしていると、かき氷のシロップをダブル掛けしていた子供の頃を思い出し、童心に帰ります。

バイスで割ったりホッピーで割ったり、色々な飲み方を楽しんで、食べたい串をちょいちょいとつまむ。

大衆酒場ではありますがそこまで安い系ではない大統領。競争の厳しい新橋でそれでもたくさんの常連さんで溢れているのは、やはり規律の厳しさと何より料理と酎ハイの美味しさが大きい。

きっちり飲んで、飲み終えたら次のお店へ。美味しい焼鳥をつまみにきっちり飲めるようになれば、酒場の世界で出世するかも?(笑)

新橋は日本一飲み屋が多い街。いろんな用途に応じた店が立ち並びますので、無理に厳しい店を選ぶ必要もありません。ただ、きっちりとした飲み方が好きな人には最高に居心地がよいかも。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

出世酒場 大統領
03-5400-2929
東京都港区新橋3-18-3 三青ビル 1F
14:00~23:00(日祝定休)
予算2,500円