豊橋「旭屋酒店」 地元ノンベエが毎夜集う評判角打ちは昭和2年創業

豊橋「旭屋酒店」 地元ノンベエが毎夜集う評判角打ちは昭和2年創業

豊橋駅前に一軒の老舗角打ちがあります。

雑居ビルに囲まれたなかにある大変立派な佇まいの歴史を感じる酒屋で、1927年(昭和2年)創業の旭屋酒店です。戦後すぐの昭和23年より角打ちの営業を開始し、以来豊橋の一寸一杯の立ち寄り処として多くの豊橋ノンベエに愛され続けています。

 

電車道に面した正面は、小売の酒販をおこなっていないこともあって日中は静か。本当に営業しているのか心配になるほどなのですが、これが日没の頃には店の奥までぎっしりと立ち飲み客で埋まり、店先まで酒飲みパワーが伝わってくるほど賑やかになります。

 

東海道新幹線ひかり号も停車し、東京からも1時間台でアクセスできる豊橋。三河最大の街で、駅前には大正時代に開業した豊橋鉄道の市内電車が今も生活の足として行き交います。

 

どことなく懐かしい駅前。駅周辺が歓楽街で、市内線に数分揺られると豊川に接した吉田城址周辺へもアクセスできます。国道1号が通り、古くは吉田宿として栄えた城の周辺。現代の歓楽街は明治始めの東海道線の開業とともに、現在の駅周辺になりました。

日中こそ、寂しい空気はありますが、夜になると港湾部のトヨタや花王といった工場で働く人たちで賑わいます。

 

立ち飲みの少ない豊橋。最近、新しいお店でぽつぽつとありますがまだ珍しい。駅前で立ち飲むといえば「旭屋」というくらい、街の立ち飲みの代表格です。

夕方頃には満員状態。店の奥へと10mはある長く伸びる一人客用のカウンターと、壁寄りに数人で使うテーブル席。喫煙可能で、灰は床に落とす昭和の世界。

壁一面に掲げられたお酒のメニューはどれも安く、甲類は200円で飲ませてもらえます。

酒屋の直営なので角打ちではありますが、料理の内容は完全に町の酒場。むしろそれ以上かもしれません。刺身、煮込み、天ぷらに串焼き、冬場はおでんも人気。そんな中にも、ベビーチーズなど角打ちの定番が加わります。

 

一杯目はビール<435タンブラー・420円>でしょう。乾杯!

瓶ビールは大手3社がありますが、ここの生ビールは格別の美味しさ。サッポロの定番ビールである「黒ラベル」なのですが、その提供品質がすばらしい。

 

ディスペンサーはピカピカだし、グラスも完璧。泡のせではない独自のスタイルで注がれるのですが、程よくガスが抜けていて、喉越しやわらかで心地良い。一口飲む毎に泡後にできるレーシングもキレイ。

 

蓬莱泉(関谷醸造・愛知県設楽町)など地元愛知の珍しいお酒も多く取り扱っていることもあり、お目当ては日本酒という常連さんも次々やってきます。

定番酒は多聞上撰。多聞は元は西宮にあった多聞酒造のお酒で、関西、名古屋、北海道で知名度のある銘柄でしたが、2002年に倒産し、現在は大関が製造を引き継いでいます。

1合入る蛇の目の大猪口に注いでもらうのも楽しく、日本酒話で常連さんたちとの会話に花が咲くことも。

 

おつまみは湯豆腐がおすすめ。醤油と味噌が選べますが、三河の角打ちは断然味噌のほうが人気。甘く深く濃厚な味の八丁味噌で、お酒がますます快調に飲み進みます。

地元名物のヤマサちくわ(1本100円)も変わらぬ人気だそう。

旭屋酒店は、実はリターナブルびん入りのホッピーが飲めるお店。東京の文化と西日本の文化が交差する豊橋の角打ちならではの、東西混合のラインナップもおもろしい。ちなみに、割り材も静岡県島田市に本社工場がある木村飲料の「カクテスサワー」なるものがあるので、酎ハイマニアの方も必見です。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

旭屋酒店
0532-52-3656
愛知県豊橋市駅前大通1丁目33
16:00〜20:30(日祝定休)
予算1,700円