武蔵小杉『くろ兵衛』朝飲み可!センターロードの午前を彩る大衆酒場

武蔵小杉『くろ兵衛』朝飲み可!センターロードの午前を彩る大衆酒場

2017年4月9日

再開発で高層マンションが立ち並ぶいまの街並みからは想像ができませんが、その昔は巨大な工業都市でした。東京機械製作所などの重工業が主体で、東横線の車窓からトタン屋根が並ぶ灰色な景色と、駅を挟んだ反対側の飲み屋街の赤ちょうちんの反対色に興味を持ったものです。

利便性の向上につれ再開発が進み、最後まで残ったNECの半導体製造の拠点「玉川事業場」も、世界の半導体の荒波に揉まれルネサスエレクトロニクスに売却、事業所統合、そして武蔵小杉の第2次産業は終焉を迎えました。

それでも、新たな客層、新たな文化に引き継がれ、昔ながらの武蔵小杉の酒場は第二の人生を歩み始めています。スターロードで38年、午前10時から開けている大衆酒場「くろ兵衛」もそのひとつ。

昔は、夜勤明けの労働者に愛された酒場も、いまは第三次産業や自由業に携わる人々の昼飲み処に変化。今日も昼から麒麟や白鹿で楽しく過ごす人々の笑い声が響きます。

一階にあるカウンター焼鳥のくろちゃんと同じ経営。名物のキムチ煮込みや焼鳥を求めて一人客が多いくろちゃん。かわって2階のくろ兵衛はテーブル席の並ぶ配置で、料理も刺身や焼き魚の種類も多い海鮮酒場といった内容です。

スターロードを中心とした武蔵小杉の酒場は、昔からキリンとサッポロのシェア争いがバチバチしている印象があり、飲みに来ている地元の人も、「◯◯ビールが好き」と銘柄指名も多い。

くろ兵衛の一番搾りは状態ばっちり、しっかり美味しい生なので、瓶ビール派の人も一杯目は生がおすすめです。乾杯!

店の扉の外側に無造作に置かれているディスペンサー。酒場はね、店先にサーバー置いちゃうくらいの雑多な感じもOK。サーバーでちゃっているお店は経験上、生が美味しいのです。店に入る前からサーバーのメンテナンス状況が確認できるしね(笑)

ビールはキリン、大びんは530円、ホッピーセットは400円。日本酒は辰馬本家酒造の銘柄が複数用意されています。酎ハイ類は350円。この界隈、なぜか電氣ブランが多い。

お通し(300円)がでてきますが、料理は刺身などの一部を覗いて一般的な酒場よりも一段低めに設定しているので、会計時には「お、安い」と毎度感じています。

一階の焼鳥に負けないくらい、2階の魚は力が入っています。次々売り切れていきますが、それでも15種類近く揃う。生くじら刺しなど、片手間ではない証。

日替わりのメニューが店の看板料理。ですが、定番も驚かされる品数の多さです。一階の焼鳥や煮込みも注文ができますので、あわせて100種類を超えます。

厨房が大きく、早い時間から営業しているのでお客さんの回転もよく、だからこそできる品数とは思えるのですが、それにしても大手チェーンなら絶対ここまでやらないレベル。ほとんど500円未満なのも嬉しい。

ごはんものもあり、昼時は食事を食べながらお銚子1本つけている粋なご隠居の姿もあります。

普通酒は、白鹿の定番。熱燗にして、左手に焼鳥、右手に猪口を持ち交互に口に運べば、武蔵小杉の昭和にタイムスリップできそう。

学生の頃から利用しているお店で、昔からここのコハダにはお世話になりました。350円でこのボリューム、大徳利(2合弱)450円とあわせてぼーっと過ごしたものです。それから10年以上、酒場は変わらないということが価値。

何かが特別優れているというのではなく、どれを食べても満遍なくいい感じなのです。だからこそ、日常に使える、なんということない飲み会にも、店選びに悩んだらここでよいのです。

旬の食材は天ぷらの日替わりにでてきます。気になるものを適当に選んでちょいちょい摘みつつ過ごす、昼酒はそんな感じがちょうどいい。夕暮れの茜色に照らされたスターロードの眺めは、まるで昭和の邦画の世界。

なんとなくいいよね、だから今日もここでいいよね。

そんな日常にあるありふれた酒場も少なくなってきました。派手なお店、とんがったお店もよいけれど、昭和の”おつかれさま”も大切に飲みに行きたいですね。

ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名くろ兵衛
住所神奈川県川崎市中原区小杉町3-431
営業時間営業時間
[月~木]
10:00~23:00(L.O.22:30)
[金・土]
10:00~23:30(L.O.23:00)
[日・祝]
14:30~23:30(L.O.23:00)
日曜営業
定休日
無休
創業40年以上前