立川「弁慶」 古参酒場には続く理由がある、昭和の残り香を肴に


立川に半世紀近く愛される古参酒場があります。中央線沿線の飲み屋を語る上で外すことの出来ない銘店「弁慶」です。

店の入口にかかる「営業中」の札は、なんとサントリー純生が描かれています。飲料に詳しい人や長く酒場に通う人はご存知かもしれませんが、「サントリー純生」は、現在の解釈における日本発の「非加熱ビール」、つまり生ビールなのです。誕生は1967年、米国NASAの技術によって開発されました。1982年には、サントリー生ビールと名前を変えていますので、この店のプレートは30余年選手です。

駅北口から線路沿いに3分ほど。これぞ大衆酒場というどっしりとした店構えが見えてきます。

 

間口が広いですが、店内はもっと大きい。奥にぐーんと伸びる空間は壮観。二階では40名の宴会も可能で、立川駅周辺のサラリーマンや、道を挟んだ向かいの線路側にJRの現業機関があることから昔から鉄道関係者も多いと聞きます。

 

入ってすぐに帳場と焼き場。昔からある酒場によくある焼台が独立したつくりです。それを背にするようにドリ場(お酒をつくるところ)に向いたコの字カウンターが配され、一人・二人のお客さんが思い思いの時間を過ごしています。

驚くことに、平日の21時頃でも大箱にもかかわらず満席。とにかく地元に深く根付いているのです。

 

ビールやアルコール類はすべてサントリー。先に紹介した純生から、ペンギンビールでお馴染みのサントリー生ビール、そしてモルツへと生まれ変わり、現在のザ・モルツへと店のビールもサントリービールの歴史とともに変化してきました。

 

赤玉スイートソーダにサントリーウィスキー「角」。ボトルが鏡月と、とにかくあの時代のサントリーが勢揃い。

 

敬意を表して、寿屋の原点・赤玉ワインのソーダ割りで乾杯。

昨今、一周なのかはたまた二周したのか、サントリー赤玉スイートワインが巷で人気になりつつあります。ソーダで割れば、京都のご当地ドリンク「ばくだん」風でクイクイと飲める酎ハイテイストになります。

 

年配のサラリーマンが中心ながら、若いアパレル関係風の女性グループの姿があるなど、弁慶の客層も世代交代が進んでいます。それでも、変わらず飲まれている人気者は、この梅干し酎ハイ。立派な梅は果肉たっぷり。マドラーでぐりぐり潰して飲めば後引く美味しさ。

 

食べ物は刺身から揚げ物までバラエティ豊か。さらに季節メニューが加わるので、初めての人は絶対迷う。価格は刺身以外は300円~400円と手頃。

「弁慶のもつ煮込みは世界一」と話す友人がいますが、しろに大根、豆腐をいれた味噌味のもので、くさみがなくねっとり美味。

 

店の看板にある通り、メインは焼鳥で、2本単位で注文できて1本140円。おみやげで買っていくご近所さんも多い。

 

ドリ場脇の大鍋でコトコトと煮込まれているものが美味しそうなので、女将さんに聞いたらぶり大根だそう。今日は煮込みではなくこちらに浮気。面取りされた大根は中までじんわり、ブリの脂やアクが丁寧に処理されていて、すっきりとした味わい。たっぷりのネギを合わせて頬張れば、冬場の路地先の大衆酒場の魅力を口いっぱい楽しめます。

 

4Lの樹氷を一旦、金属の桶に移し替え、そこからお玉ですくってジョッキに注ぐのが弁慶の流儀。見ていると、まるで茶道のようでちょっぴり可愛い。程よい度数でくいくい飲めます。

 

お店の看板料理、焼鳥から若鳥、しろ、かしらを。飴色のとろみたっぷりのタレは、甘さしっかりでみたらし餡風。しろは煮込み用と同様に徹底的に処理されています。最近は派手なやきとんが増えましたが、これは典型的な昭和の味、昭和の香り。樹氷とあわせて、やっぱり美味しい。

 

日本酒は菊水をメインに扱っているので、冬季限定で五郎八(新潟・菊水酒造の冬季限定濁り酒)を扱っています。お米の粒々とした口当たりが残り、濃厚な米の風味とまろやかな酸味。

ここから揚げ物にシフトして、サントリーモルツ(大びん560円)で盛り上がるのもよし、サントリーオールドとチーズ春巻きでちびちびいくもよし。

中央線は、まだまだ奥が深い。皆さんもぜひ立川へ。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

弁慶
042-526-1370
東京都立川市曙町2-14-32
16:30~23:00(日定休・ランチ営業あり)
予算2,000円



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