人吉「入道」 温泉と焼酎の街のとっておき。球磨川に乾杯


熊本の震災からも月日が経過し、少しずつではありますが街は元の姿に戻りつつあります。阿蘇や人吉、天草など、お酒と肴に恵まれた熊本県の復興を、心から願っております。

復興の追い風には、なにより地元の経済をまわすこと。いつもと違って球磨焼酎を買うのも応援ですし、協会酵母9号発祥の地・つまりは吟醸酒誕生の地でもある熊本の日本酒を飲むことだって立派な支援です。いま再び、熊本を飲もうではありませんか。

 

今回は、せっかくだから飲みに行こうということで球磨焼酎の街、熊本・人吉を訪れました。熊本駅から人吉駅まではJR肥薩線の快速で約90分。オンシーズンには「SL人吉」号という蒸気機関車が牽引する観光列車が走るほか、2017年4月からは新たに特急「かわせみ やませみ」という観光特急の運転も計画され、熊本市内観光の延長で訪れることができます。

旅情あふれる人吉駅舎には、キヨスクが現役で営業中で、駅弁なども楽しめます。

 

駅前から徒歩少しの場所に悠々と流れる球磨川があり、川沿いを散策すると日本の里と山の変わらぬ眺めで癒やされます。川沿いには球磨焼酎の酒造場が立ち並び、見学に対応している蔵もあります。

 

そして、なんといっても人吉の夜がいい。寂れた温泉街といった雰囲気はなく、街の規模はそれほど大きくないのに、酒場は深夜まで笑い声が響いています。

まず立ち寄ったのは、宿泊した宿の女将推薦の居酒屋「入道」です。地元の女将や観光業に携わっている人たちの宴会場所として定番なのだそう。地元の情報、ありがたや。

となりの大衆酒場「やきとり大将」も気になるところですが、あいにく定休日。課題店を人吉に残す結果となったので、改めてパトロールに来なくては。

 

スナックの入るビルの奥にある看板を目指して進むと、ビルの中ではなく、脇の小道への案内が見えてきます。建物と建物の間、本当に大丈夫かな。

 

やってきました。入道。店構えが途端に可愛い感じになっていて、一安心。それでも、地元の情報がないとまず観光の飛び込み客は難しいでしょう。

 

店はオープンしてそれなりに歳月が経っていると聞きますが、とてもキレイにしています。山林で囲まれた土地らしく、ふんだんに使われている杉がいい味わいをだしています。

 

先客はやはり地元の方のよう。球磨焼酎のお湯割りで気持ちよさそうです。

さて、せっかく米焼酎の里に来ているのだから、ビールではなく、最初から飛ばしていこう。酎ハイ類があるので、もしや球磨焼酎をソーダで割っているのかと訪ねてみましたが、サントリーの樽詰チューハイでした。むしろ、甲類ってなんですか?という反応。これだけ情報化した時代でも、酒場のメニューは地域差が大きくておもしろいですね。

 

日本酒も置いています。菊姫・八海山・玉の光などの定番の中に、しっかり熊本・阿蘇のお酒「れいざん」の文字も。

 

おちょこ、ぐい飲み、いろいろ選べて趣味が良い。

 

悩んだ末に、まずは日本酒から。れいざん本醸造をお燗で。片口を傾け、トトトとお猪口に。それにしても、選んだ猪口が渋い(笑)

では乾杯。阿蘇の水は軟水で、それで仕込んだ日本酒や焼酎は口当たりまろやかで優しい女酒。派手さはないですが、じっくり付き合いたい味です。

お通しは地元でとれた山菜・青物を中心に出すそうで、これだけで日本酒が最高に進むのです。

 

山の中でも、お刺身はあります。かつお、海老、蛸にしめ鯖。熊本県人吉市なので、天草や八代海の港から入れるのかと思いましたが、こちらは宮崎から入れているとのこと。宮崎自動車道の開通で利便性がぐんとよくなったことと、ご主人が宮崎出身で、昔からの馴染みのルートがあると話します。

 

地元の人のおすすめは、キクラゲ刺し(580円)。人吉では昔から食べられてきたもので、海なしの時代の工夫の名残のように思えます。すぐ近くで栽培されているものを使っているそうで、ある意味・鮮度抜群の刺身です。

 

九州特有の甘い醤油をちょっとつけて頂きます。醤油はもちろん地元の醸造品。肉厚でぷりぷり、とにかく食感が心地よく喉の通りもいい。甘い醤油は好みがわかれますが、九州の味が好きな人にはキクラゲは最高のつまみかもしれません。

 

あんまり地元の郷土料理ばかりにしていないのは、この街に住んでいる人の酒場だからでしょう。それでも、畜産が盛んな地域らしい、角煮や黒毛和牛などが並んでいます。ちょっと贅沢品なので、今日は我慢。

 

でも、せっかくだから馬刺しは食べてみましょうか。馬肉生産量全国一位の熊本県。もちろんメニューに載っています。2,600円と奮発品です。

 

このタイミングで球磨焼酎に切り替えて。球磨焼酎は米なのですが、地元の焼酎15種類がずらりと顔を揃えています。本来ならば産地名が入る欄には「常圧」「減圧」の文字。製造方法の違いで深く複雑な味わいにも、あっさりマイルドな味にも変わる本格焼酎ですから、この表記は嬉しい。

飲み方は、昔の人はひたすらお湯割りが基本ですが、今の人は地元民でもロック派が増えているのだそう。じゃあ、私は次の店でお湯割りにするとして、まずはロックで。

 

美味しい地元の焼酎が一杯330円からと、他の飲み物と比較すると一回り安い。九州全体の傾向ですが、とにかく焼酎が安く、ウーロン茶よりも手軽な飲み物といってもいいかと。ぐいぐい飲んでいい気分。(※お酒は適量で)

馬刺しを白ネギで巻いたもの。にんにくを溶かした醤油をちょいとつけていただきます。余韻に焼酎を合わせて、旅先酒を大満喫です。

 

それから330円だからー、と何倍もおかわりを続けて、カメラも傾いてしまうほどいい気分。

地元の人の一軒目として重宝されているようで、料理が丁寧でしっかりしたものを食べさせてくれます。もちろん、私みたいにエンドレス・球磨焼酎をする人の姿も。熊本の復興に貢献と思えば、いつもよりもう一杯が進んでしまいます。

さぁ、熊本のお酒を飲みにいきませんか。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/九州旅客鉄道株式会社・人吉市の皆さん)

 

入道
熊本県人吉市紺屋町111
0966-35-7055
18:00~23:00くらい(不定休)
予算3,000円



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