【閉店】和歌山「丸万」 街一番の老舗は味な店、名物の湯豆腐に癒やされる

【閉店】和歌山「丸万」 街一番の老舗は味な店、名物の湯豆腐に癒やされる

2016年12月9日

Syupoもついに和歌山進出。記念すべき一店目は、和歌山で最も古い酒場「丸万」をご紹介します。

1926年(大正15年)創業で、まもなく百年酒場となる伝統のある酒場です。和歌山駅からすぐの場所にあり、午前11時から通しでやっていることもあり、使い勝手もいい。なにより、歴史に裏付けられた銘店であることは言うまでもありません。

味わいのある店構えは、古くとも清掃と保守が行き届いていて清潔感があります。たまには「良いお店の見分け方は?」と聞かれることがありますが、まさにこれがその答えです。キリンとキクマサの文字に挟まれて、美しく光る暖簾がかっこいい。

 

十数席のカウンターが特等席。とくに中央は大将が目の前に立つ花板の前であり、この店の魅力を最大限に楽しむプラチナシートです。このほか、4人テーブルがいくつかと奥には畳の座敷も用意されています。伝統のある酒場によくあるゆったりとした造りです。

カウンター中央のどて焼き鍋は静かにクツクツと音をたて、店内に甘くて温かい空気を漂わせています。

 

8割以上の人が生ビールを頼むというお店ですが、この雰囲気にはやはりラガーを合わせたい。ということで、少数派の瓶ビールを注文。一番搾り(IS)、ラガー(CL)のほか、季節銘柄の秋味などもシーズン中は入るそうです。

今も現役、渋さにしびれる6タン(ビアタンは現在はビールメーカーの提供品がないため貴重。)にトトトっと注いで、では乾杯。

 

はいらっしゃい、品書きはこれね。みんな美味しいよ!と大将。地物のタコやきずし、くじらも郷土の食材ですから、生姜焼きでも食べさせてくれます。梅くらげ250円から、上は鍋までいろいろありますが、どれも庶民的で嬉しい。

 

昼から通しで営業しているものの「定食屋」ではありません。あくまで酒場のシメとしての料理ですが、それでもごはんものが豊富。ちょうど、テーブル席のサラリーマン4人組が、飲みの〆にカツ丼ご飯小を注文していました。

 

名物の湯豆腐と、大将自慢のどて焼き(いずれも380円)がカウンター中央にセットされています。湯豆腐が常にグツグツと煮立っていて、中で豆腐が出番を待っています。

 

独特な丸い形状で固くつくられた絹ごしの湯豆腐。出汁でずっと煮込まれているのに崩れていません。出汁たっぷりの特製ポン酢をかけて薬味を一振り。夏季でもよくでるという名物湯豆腐は味のバランスがよく、説明の要らない美味しさです。

 

自慢のどて焼きは、肉2本にこんにゃく1本のセット。国産牛のアキレス腱のナンコツを使用しているもので、盛られたてはほろほろ、ナンコツとは思えないくらい柔らかい。甘辛味噌でじっくり煮込まれ、濃厚ながら余韻がすっきりした味は、ビールや日本酒との相性バツグンです。

 

日本酒は菊正宗。上撰と吟醸を扱っている他、和歌山県で唯一菊正宗の本格焼酎「七年貯蔵」が飲めるお店でもあります。

「大将、燗つけて」と言えれば大人です。小さい徳利もありますが、とくに言わないと大きい方がやってきます。徳利を酒燗器にぽちょんと落とし温度計で確認する丁寧なお燗方法をみていると、いつものキクマサも今宵は特別に思えてきます。

 

「今日は寒いからちょいと高めに燗したよ」と大将。そっと注いできゅっと含めば、”ぽっ”といい気分。雲丹くらげをもらって、さぁちびちびやりましょうか。

 

温かい食べ物をよそうお皿や燗酒の猪口は一旦湯煎して温めてからだしてくれる気遣いが素敵。

現在、2代目の大将は店を継いで51年目。半世紀以上店に立つのが誇りとばかりに色々とお話をしてくださいました。戦後すぐに東京の大学に入学し、大手企業に就職するも、親の店を受け継ぐことになり、東京生活は10年だったそう。そのときに知り合った奥様と結婚され、いまもいっしょに店に立たれています。

家庭的で優しく、酒場の誇りをもった素敵なが夫婦が守る和歌山で大切な暖簾。私たちノンベエも、名門酒場を次の世代につなぐべく通い飲んで守りたいですね。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

丸万
073-428-1515
和歌山県和歌山市友田町4-91
11:00~22:00(日祝定休)
予算2,600円