森下「みの家」 日曜は昼酒紳士の集いの場、下町料理の定番で一献


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1897年(明治30年)創業のみの家。有名な飲み屋が立ち並ぶ森下の中でもひときわ歴史のある”酒場”です。隅田川と竪川(たてかわ)と小名木川(おなぎがわ)に挟まれた森下は、江戸時代から昭和にかけて水運の街でした。貯木場や開運に携わる人たちが多く暮らした森下には、大衆的な飯屋や飲み屋が多く誕生し、日本橋界隈の鰻屋や牛鍋屋とは違った食文化が育ちました。

そのひとつが「桜鍋」です。馬肉の味噌鍋で、浅い鉄鍋ですき焼きのようにして食す東京特有の鍋で、森下の”みの家”のほかにも日本堤や赤羽など、昔で言う郊外の場所にいまも点在しています。

桜鍋の店として観光名所ということもあり、お酒を飲まずに食事利用でくる人も多いですが、常連のお父さんたちは、ここで胡座をかいてビールからの日本酒という流れを実にスマートに、かっこよくきめていらっしゃるのです。とくに日曜日はお昼から通しでやっているので、昼飲みの常連さんが増えます。午後の穏やかな日差しが差し込む庭を眺めつつ、きゅっと一献やる昼酒は格別なのです。

 

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銅板葺きの看板建築ながら単純なデザインではなく、ハニカム構造の飾りが施された雨戸納めや、桜鍋みの家の重厚感ある扁額が実にかっこいい。

 

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下足番のお父さんに靴を預けたら、広間に通されます。早い時間ですと奥に座れることが多く、庭を通してガラス戸越しに差し込む陽の光がビールにあたります。黄金色に耀く美しいビアタンを持って、長年続くこの光景に乾杯。

テーブルの天面が金属でできていて、銀色同士でアサヒスーパードライ(大びん700円)の瓶がよく似合います。店全体が穏やかなニス色なので、銀と金のコントラストがキレイ。ふんわり香る甘辛い空気が、これから美味しいもので飲むぞという気持ちを一層高めてくれます。おつまみが出る前に大びん一本は空いてしまうかも。

 

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舌代をみてみますと、ご覧の通り、看板料理の桜鍋だけでなく刺身や板わさなどのつまみがあり、飲み物もワインまである充実ぶり。これは間違いなく飲み屋の顔ぶれです。

 

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桜鍋を頼む前の前座として、ゆっくりと「みの家」飲みを楽しみましょう。馬肉は青森のみの家の直営農場から。馬刺し(1,900円)はねっとりとした食感で、淡白に感じつつも噛むほどに旨味がゆっくりと流れてきて、気づけば口の中は馬肉の味でいっぱいになります。熟成をしているようで深い味わいが美味。そんな余韻にすかさず、きゅっと合わせるビールがまさに快感です。

 

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年配の常連さんが、「みの家に来たからって、焦って馬肉ばかり食べちゃだめ。まずは玉子焼で落ち着いてからだ。」と昔教わって以来、みの家の玉子焼は外せない。馬肉料理ではありませんが、明治時代から続く老舗らしい東京流の落ち着いたいい味がします。

 

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瓶ビールを2本ほど飲んで、気分を落ち着かせて、でもどこかで欲求が盛り上がってきたところで、いざ桜鍋へ。広間のテーブルには予めガス台が用意されていて、あとは載せるだけ。お姉さんが一通り準備してくれるので、その様子を邪魔しないように飲みながら待ちます。

 

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甘辛い味噌タレと脂をまず鍋に流して、割り下と馬肉についてくる味噌を程よく混ぜ合わせていただきます。

 

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このあたりから日本酒へ転換。東京の老舗に似合う白鶴です。池波正太郎の気分でお燗酒で鍋をつつくのもよいですし、鍋の湯気で多少火照ってきていたら冬でも生貯蔵冷酒も美味しい。一合600円は、老舗ながらやはりどこか庶民の食事だった名残が感じられます。

 

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桜鍋の由来のごとく桜色をした馬肉がほんのり色が変わってきたら食べごろ。馬肉そのもののあっさりとした印象のあとに、すぐにみの家伝統のタレの味がぐーっと伝わってきて、最後は馬肉の旨味が余韻として残る。

具を少し残しておき、しめの食事として御飯の上に馬肉やネギの卵綴じをのせるという食べ方もありますが、今日はお昼酒なので、別皿で豆腐と榎をもらって、鍋を最後までおつまみとして味わいます。

 

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馬肉の脂とみの家の味噌が混ざった最高の鍋つゆを、味を染み込みやすい榎に吸わせて、豆腐と合わせて食べるのがおすすめです。

 

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調理前の皿でみると量が少なく感じるものですが、味が濃厚でこれくらいがちょうどいい。古くは働く人たちのエネルギー源だったものですが、いまは飲兵衛のつまみとして少しずつ摘むほうが桜鍋はいいかもしれません。お腹を満たさず、心を満たす鍋ですね。

 

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チェイサーにスーパードライ。白鶴と馬肉の組み合わせのあとに、のどごしが軽くすっきりした味のスーパードライはぴったりだと思います。

一度食べると、多少お値段が高くてもまた食べに行きたくなる魅力的なお店「みの家」。ぜひ飲兵衛の皆さんは日曜日のお昼にこの穏やかな昼酒を楽しんでみてほしいです。老舗大衆酒場がお好きな方なら、この雰囲気はきっと気にいるはず。下足番のお父さんに見送られて、ごちそうさま。

あぁ、食べた食べた!

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

桜なべ みの家 本店
03-3631-8298
東京都江東区森下2-19-9
16:00~21:30(日は12:00~21:30・月と5~10月の第三木定休)
予算7,000円



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