築地「たけの食堂」 市場とともに歩んできた粗野な空間でいい気分


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今日は自宅近くでのんびりお昼酒。築地で昼酒といえば、やはり「たけの食堂」は外せません。1935年(昭和10年)の築地市場稼働とともに築地の空腹と飲み欲を満たし続けてきた銘店です。

よく場内やもんぜき通り周辺と思われがちですが、晴海通りの勝鬨橋寄りの細い裏路地の奥にあります。インターネットの飲食店情報があたりまえに浸透した今だからこそ誰でも入れますが、昔ここの暖簾を初めて潜るときは心臓がバクバクとしたものです。

なにせ店の前がすごいことになっています。飾りっ気なし、空瓶入りのP箱やらトロ箱が無造作に積まれています。それでも、暖簾がびしっとキマっているのが、やはりいい店の雰囲気をそこはかとなく醸しています。

 

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袖看板の「富翁 トミオー」の文字が、老舗酒場を愛するものとして惹かれるものがあります。京都伏見の高瀬川運河に隣接する場所にある1600年代創業の歴史ある酒造「北川本家」の銘酒の名前です。

 

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店内にはずらりと短冊が張り出されています。その日の市場の状況や仕入れによって貼り変わるもので、何度か寄っても首が左右に大きく動かしてすべてを見渡す必要があります。カキフライなど狙っものがある人以外は、みんなでぐるぐると。

短冊には値段が書かれていなく、ほとんどが時価の設定です。高級寿司店でなくとも、海産物の相場は大きく変動するので市場の食堂らしいともいえますね。

定番の揚げものや内容の調整ができる刺身盛り合わせなどの定食類は、手元の品書きで値段を確認することができ、だいたいの店の予算も想像がつきます。

 

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まずは瓶ビール。築地・銀座界隈はサッポロビールの前身・日本麦酒から、現在の恵比寿にサッポロ本社移転する1994年まで拠点があったことからサッポロのシェアが高い。代々担当している営業さんもエース級。

ということで、ここはやはり築地らしく、サッポロではじめましょう。それでは乾杯!

 

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種類が豊富で何を食べてもはずさない「たけの食堂」。鯛やヒラメなどの華がある魚も良いですが、私は鯵が好き。三枚におろして、それをそのまま包丁をいれてささっと出したもの。まさに市場メシといった感じ。

醤油にちゃちゃっとつけて頬張ればもう最高。脂ののった旨味の余韻に黒ラベルを合わせていけば、簡単に手に入る昼酒の喜び。

 

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鯵の刺身にビールをぐいぐいと。大びんひとつでは足りないので、日本酒をもらいましょう。定番酒はもちろん富翁。築地は場内の食堂を含めて富翁が他の地域と比較しかなり多い。辛さや芳醇さを際立たせた派手なお酒が増える中、昔ながらの落ち着いたバランス形で、とくに醸造用アルコールの使い方が非常に上手だと思っている富翁の本醸造。これが大好きです。

 

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キスの天ぷらも、ばしばしと揚げて出してくれます。上品なものはお向かいの銀座にまかせて、築地はこれくらいが似合うように思います。肉厚でぷりぷり、飾りではなく食材で真正面から勝負しています。

 

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メバルの煮つけはまるまる太った巨大なもの。今日は二人で飲みに来ているから良いけれど、一人ならば満福まちがいなし。東京らしい黒に極めて近い焦茶色の煮汁は、見た目の通り味が濃いですが、これだけぷりっと大きいメバルだとこのくらいの味がちょうどいいかもしれません。

瓶ビールのけいりも大きなメバルに、今日もたけの食堂に負けてしまったという謎の敗北感(笑)

 

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あとは、これらの肴をちょいちょい摘みながら、サッポロ黒ラベルをチェイサーに富翁をくいくいと。

はいってすぐのカウンター席は目の前で次々と調理されていく魚がみれる特等席。昼間はランチ利用でさくっと食べていく人がひっきりなしにくるので戦場のようになっていますが、家族経営ならではの阿吽の呼吸でまわしている姿をみると、地に根付いた商売って素敵だなとひしひしと感じます。

二階にも席があり、早い時間に揃うのであれば予約も可能なお店。夜の飲みで賑わう時間もいいけれど、やっぱり私は15時くらいのアイドルタイムがいい。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

多け乃
03-3541-8698
東京都中央区築地6-21-2
11:00~21:00(土曜日は20時まで・日祝定休)
予算2,500円



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