湯島「蘭亭ぽん多」 昼飲みの贅沢、白いとんかつを塩でいただく

湯島「蘭亭ぽん多」 昼飲みの贅沢、白いとんかつを塩でいただく

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とんかつにビールは最高の組み合わせ。奇をてらった派手な今風の店ではなく、できれば老舗がいい。ビールも、”最近になってつくってみました”的なものでなく、長く愛され続けている日本の古参銘柄と合わせるのがいい。

例えばここ湯島の「蘭亭ぽん多」 は、まさしくそんな気分のときにぴったりのお店です。昭和7年に稲荷町で精肉店として創業し、1946年、とんかつ店をオープンさせた老舗で、今年で70年を迎えます。約50年ほど前に湯島に移転して以来、鈴本演芸場をはじめ上野公園なども近いことから、湯島・池之端に訪れる様々な人たちが立ち寄る店として、湯島を彩る味のひとつとて愛され続けています。

老舗の風格ある佇まいの店舗ですが、なんと屋上には温室があり、店主の渡井豊さんが千鉢のランを育てていらっしゃいます。店先や店内に静かに飾られている蘭が、店の雰囲気をそっと華やかにしています。

 

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二代目の渡井さんと、ご婦人の久代さん、そして息子さんで三代目となる研太郎さんの三人で店を切り盛りする家族経営の暖かなお店です。ビールは昔から瓶ビールのキリンラガー(735円)。老舗の店主が慣れた手つきで”シュポ”と栓を抜くのは何度みても惚れ惚れします。

 

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やっぱり老舗の店には老舗のビールが似合います。では、キリンラガーで乾杯。

 

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自家製のマヨネーズでつくる野菜サラダは、コールスローのように細かくきった野菜で、こんなところにも老舗の味を感じます。

 

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100度ほどの低温で、じっくり泡を立てずに15分近く焼き上げるとんかつは、衣はさくっとしていながらも柔らかく、それでいて油っぽさがない。さくっと仕上がるギリギリの揚げ具合を狙っているのがよくわかります。

 

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ほんのりピンクの切り口、肉は箸がすっと通るほど柔らかいのですが、それでいて食感はジューシーさと程よい肉のぷりっとした噛みごたえ。ぎゅっと詰め込まれて濃縮したようなとんかつも美味しいですが、その対面というか、豚のそのままの美味しさをプレーンに味わうとこんなに美味しいのかと気づかせてくれるとんかつです。複雑な味ではなく、単純明快なものなのに実に深い旨味があり、最初は塩で食べるのがいいよという店主さんの言葉通りです。

 

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こちらは要予約ですが、7時間ボイルしたあと、さらに初代から受け継ぐドビソースとともに1時間煮込んだ、とんかつと並ぶ「蘭亭ぽん多」の名物料理、「タンシチュー」(4,935円)。山椒を風味付けとしている通り、醤油の風味がある日本洋食的な味でまとめられています。半世紀以上、鍋までも先代から受け継いで使っている味は、まさにこれそのもが「昭和の伝統」だと言えるでしょう。

特製とんかつ(3,570円)と、とんかつ店としては街の店とは並ばない価格設定ですが、風格と敷居の高さがあるからこその落ち着きや上品な味をゆっくり楽しめる。そういうのも池之端・湯島らしさを感じられ、また再び暖簾がくくりたくなるものです。平日のランチは1,500円で用意がありますので、ご興味がわいてきましたらまずはランチからいかがでしょう。中瓶1本くらいつけてもいいよね。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ 取材協力/キリンビールマーケティング株式会社)

 

蘭亭ぽん多
03-3831-6203
東京都文京区湯島3-37-1
11:30~14:00 17:00~20:00(日祝は19:30まで・月定休)
予算4,000円