天満「多聞酒蔵」 せんべろ路地で愛され続ける名立ち飲み

天満「多聞酒蔵」 せんべろ路地で愛され続ける名立ち飲み

2016年8月30日

DSC09385

日本中飲み歩いているわけですが、やっぱり安さでは大阪に叶うところはないですね。東京や名古屋、福岡なども数店は特筆できるほどの「せんべろ」業態はありますが、街中が千円で飲める酒場だらけというのはやっぱり大阪だけ。安く飲みたければ、大阪に行こう!(笑)

例えば、夕方の天満なんて最高です。朝の京橋、昼のミナミ、夜の梅田地下街、一日中せんべろ梯子が楽しめます。お昼からやっている酒場も多い天満は、JR大阪環状線で大阪駅からたった一駅にも関わらず、駅構内から徒歩20秒の場所にも賑わう立ち飲みが並んでいます。日常と飲酒環境の境目といいますか、ハードルが低い街。飲兵衛にはたまらない空間は、まさにテーマパーク。これまでも界隈の酒場を紹介してきましたが、そろそろ「多聞酒蔵」を紹介する頃合いかなと。

世界一統という和歌山の地酒を看板に掲げる酒場です。16時のオープンと同時にぞろぞろと常連さんたちが流れ込み、世間が定時になる17時過ぎには満員となるほどのご当地愛され酒場です。

 

DSC09382

大阪の店によくある奥に長い一本のカウンターとその内側に厨房という造り。入り口の雰囲気の通り、お世辞でも新しいとは言えないお店ですが、厨房機器は隅々まで磨かれていて清潔感があります。とはいっても、天満の昔ながらの立ち飲みには変わりないので、女性のお一人様は難しいかも。

なんて、文章を書こうと思っていたら、先客でお姉さんが一人、背筋を伸ばしてアサヒのチューハイ「樽ハイ倶楽部」を飲んでいました。これは失礼しました。

 

DSC09380

厨房は細長く広めとはいえ、その空間では考えられないほど種類の豊富なホワイトボードに驚かされます。なにもここまで揃えなくともいいのに。商品点数を絞って在庫管理をしやすくして効率を上げる…という大手的な発想と真反対。毎日通っても飽きない膨大な料理の数々に初めての人でなくとも圧倒されるに違いありません。

鮎や鯛の白子焼き、焼きハマグリなんていう割烹的な名前もあれば、エビグラタンから焼き餃子まである、小さな総合居酒屋です。

 

DSC09379

すぐでる小鉢メニューは冷蔵ケースに入っています。大阪はこういう商品を選べるお店が多いのが地域の特長。この料理たちとホワイトボードの記載を一致させるだけでも手間が掛かりそうと思いますが、何十年とこれをやっているのですから余計な心配なのでしょう。

 

DSC09378

ビールはアサヒスーパードライ。生もありますが、ダイビンでいきましょうか。界隈のダイビン相場は400円前後。駅前の好立地にも関わらず、素晴らしい。ショーケースから焼きナスをもらって、肴も確保。すっかり秋ですね。

トトトっと注いで、では乾杯!

 

DSC09377

400円のカニ身。しっかりとしたボリューム。家庭で食べる缶詰の汁っぽさは皆無、しっかりとした弾力のある身ががっちりくっつき合っています。100円から200円がメインの価格帯の多聞では高級品だけれども、こういうのも余裕で食べられる相対的な安さが嬉しい。

 

DSC09381

おとなりの常連さんがサンマを頼んでいたので、その匂いにつられてこちらも。

 

DSC09383

秋のサンマに瓶ビール。ねっとりとした脂を感じながら、すかさず余韻にビールを合わせていきます。「どうや、うまいやろ」と先に頼んでいた常連さんから話しかけられる、そんなのも大阪立ち飲みの当たり前で、魅力のひとつでもあります。

 

DSC09384

焼きナス、サンマ塩焼きときて、ここでグラタンに行く。なんでもござれの立ち飲みですから、料理の順序や一連の流れなんか気にせず、その瞬間に「コレ食べたい」と思ったものを頼めばイイ。注文をうけてからマカロニ、クリームソースを盛って最後にチーズをたっぷりのせてオーブンに入れてくれる手間の掛かった一品。グラタン専門店や老舗の洋食屋で食べるのも好きですが、立ち飲みでわいわいと盛り上がりながら300円で食べられるこれだって大好きです。

世界一統は300円、チューハイ類も300円前後、ダイビンを1本飲んで他2杯ほどにおつまみを好きなだけ食べても2,000円でお釣りが来るくらい。天満のせんべろ路地は相変わらずすばらしい。年配のお父さんたちが夜な夜な通う理由がわかります。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

 

多聞酒蔵
06-6357-7890
大阪府大阪市北区天神橋4-4-8
16:00~23:30(日祝定休)
予算1,000円