十条「田や」演劇場通りで昭和28年から創業している名酒場

十条「田や」演劇場通りで昭和28年から創業している名酒場

2016年7月14日

1953年創業、十条の大衆酒場「田や」。近所の提灯店がつくる赤提灯が目印の店。初代が秋田出身のため、秋田料理が多く、冬はきりたんぽも人気。古き良きイタメシ屋を連想するような洋食も加わり、品数は100種類を越えるほどあります。

JR京浜東北線の東十条駅と埼京線の十条駅をそれぞれ別の街だという認識の方も多いですが、実は両駅の間は細い商店街で結ばれていて、ちょうどいい散歩コースです。同じ商店街を共有しているということもあり、雰囲気はどちらも似ていて「大衆」という言葉が似合います。

 

この両駅を結ぶ道が演劇場通りといい、その名の通り中ほどには昭和26年に開館した大衆演劇専門の「篠原演芸場」がその由来。アーケードこそないものの、程よい道幅に元気のある個人商店が並ぶこの界隈は、街歩きをしていて実に楽しい。そしてなにより、酒場巡りにも最高の通りです。今回は演劇場通りの銘店「田や」を今回ご紹介いたします。

 

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下町酒場の雰囲気に秋田の郷土色を加えて

演劇場のオープンから2年後の昭和28年創業したお店で、田谷さんのお店だから「田や」という名前です。秋田出身の先代がつくった秋田料理が今も残り、一般的な下町酒場とはひと味違った色がでています。

まるで銭湯のような佇まいに藍色の暖簾、キレイに掃除されているキリンのロゴ入の立て看板が目印です。

 

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大衆酒場の基本形、コの字カウンターが店の中心にあり、グループで飲む場合は小上がりも用意されています。一人飲みでこのコの字カウンターでぼーっとすると、それはもう心地よいものなのです。

店内のつくりは、どことなく地方の食堂のような風情があり、東京の中心から数キロしか北上していないのに、気分はすっかり北東北のようになります。

 

品書き

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日替わりメニューは、季節感のあるもの中心に魚河岸のときどきのいいものが並んでいます。

もともとは近隣の製紙工場をはじめとする工場労働者向けの食堂だったそうで、その後お酒を置くようになり、現在の酒場へと姿を変えていったのだと聞きます。ですので、現在のメニューにもがっつり系の定食メニューの顔ぶれが揃い、当時の面影を残しています。

 

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ビールはずっとキリンビール。一番搾りの生中は、中ジョッキにも関わらず600mlは入っている大きなもので、昨今の居酒屋の大生的なボリュームです。これをぐっと持ち上げて乾杯する瞬間、あぁ、田やに来たなと感じるのです。

では乾杯!ふー、やっぱり磨き上げられた大手ビールが最高です。

 

キリンの大生とカラフルなお通し

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お通しはいつも色々盛られています。

おつまみは壁にずらりと短冊にかかれていて、さらにホワイトボードと黒板にもびっしり書かれていて結構悩みます。

そんなとき、コの字カウンターの特性を活かした技がここではオススメ。お腹のあんばいを話て相談すれば、適当なおつまみを紹介してくれるし、いろいろ融通を利いてもらえます。食堂時代からの人情味あるお付き合いが今も残る田やは、おつまみだけでなくお店の方との会話も含めて楽しいお店です。

 

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雑多にものが並んでいるようで、女性でも入りやすいキレイな雰囲気もあり、一種独特な昭和酒場のムードがあります。作られたテーマパーク的な昭和ではない、今も脈々と受け継がれている常連とお店が繋ぐ活きた昭和を味わえます。

 

昭和の味を堪能できる場所

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刺身はどれも鮮度がよくて毎回納得の味なのですが、それだけでなく焼き魚、炒めもの、揚げものもちゃんとしています。

イチオシはメンチで、様々飲み歩いてきて最後にたどり着いてもメンチだけは毎回頼みたくなる一皿です。たっぷりのソースをかけてどうぞ。

 

冬場はきりたんぽ鍋が人気で、テレビ番組などでも取り上げられています。

夏の夕暮れには、鯖の燻製などちょっとしたお酒のつまみをとってゆっくりと空間に浸るというのもよいものです。

高い天井で音の反響が少なく、賑わっていてもなんとなく落ち着いた感じがあります。一人酒でも、二人、三人でふらりと暖簾をくぐるのもどちらもオススメです。土日もやっていますから、休日は街歩きがてら16時の口開けを狙って飲みに行くのがいいですね!

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)