千駄木『にしきや』この地で70年、家族で守る愛され酒場

千駄木『にしきや』この地で70年、家族で守る愛され酒場

2016年6月22日
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下町情緒の残る街として東京観光の定番となっている谷根千ですが、歴史的にも本郷台地という地形的にも山の手になるんですよね。飲み屋的にどうかというと、やはり町の歴史の影響を受けやすい世界なので、山の手的です。下町の酒場と山の手酒場の再定義を…あ、そういうのは長くなりそうなので別の機会に。

根津から千駄木にかけては駅の周辺だけでなく、表通りから路地裏まで酒場が点在していて飲み歩き、とくに開拓好きの人にはたまらなく楽しいエリアではないでしょうか。ぜひとも観光ガイドだけでなく、自分の勘で、嗅覚で、ときには酒場雑誌やWEBマガジンなんかを参考にしつつ飲み歩いてみて欲しいです。

今回ご紹介するお店は「にしきや」。千駄木駅の地上出口から数メートルの好立地。不忍通りに面した酒場で、1952年の創業です。不忍通りの拡幅などの影響を受けつつもこの地で家族代々で暖簾を守っています。キレイな店前にアイロンの掛かった暖簾、そして「はも鍋」の文字。みるからに外れることのない外観でしょ。

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焼台のある厨房に向いたカウンターとテーブル席のつくり。一人で飲みに来ても楽しめる安心の個人酒場のつくりです。壁にずらりと並ぶ短冊は季節を反映したものばかり。焼台があり、メインはもつ焼きながら、はも鍋の品書きもある通り、和食全般を揃えています。

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ビールは瓶も生もキリン。せっかくなので、全部頼んでみました(笑)
大びんはキリンラガーで550円、中ジョッキは一番搾り(550円)、大生はちょっと懐かしい昔のデザインの老舗酒場らしいジョッキで750円。蒸し暑い東京の夜、きりっと冷えたビールは最高に美味しい。それでは乾杯!

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嬉しいな、ビールはいつも一番大きいのを頼んじゃう人です(笑)

やや遅い時間に飲みにきましたが、先客と入れ替わりで入ってくる人も多く、個人酒場の老舗としては大変うれしいご繁盛店。観光地である以上に住宅街ですから、仕事を終えて自宅周辺に帰ってきてふらりと夕飯感覚で立ち寄る人も多い。

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定番の煮込みは味噌ベースで、下ごしらえがしっかりされた臭みのないモツとお豆腐が絶妙なバランスで優しい味わい。これにはビールはもちろん、日本酒もきゅっと飲みたくなってきます。

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季節の料理を多く揃えていて、そんなところに千駄木の老舗らしい風格が感じられます。稚鮎の天ぷらは初夏の味。梅雨の栄養価の高い川で育つ鮎は、大きく前のこのくらいのサイズが味がぎゅっと詰まっていて、ちりちりの身と頭まで食べられる柔らかさ。挙げの腕前のよさはもちろん、600円という大衆酒場らしい価格設定も素晴らしい。

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和食の腕自慢の大将ですが、店の歴史としてメインとなるのはもつ焼きです。もつ焼きがでてくるとなれば、お酒もそれに合わせてレモンチューハイ(300円)に切り替えましょう。協和醱酵時代の青と赤のグラスがまた懐かしい年代もの。もうメーカーそのものが存在していない(アサヒと合弁ののち吸収合併)ので、いずれこのグラスで語る日本の甲類焼酎史なんていう話題をする機会が来るのかも。あ、マニアック過ぎて盛り上がらないか。

さて、ここのレモンチューハイが一般的なそれよりも美味しい。ガス圧が高い炭酸とレモンの果肉がしっかり味を出していて、甲類の濃さをもろともしない飲み心地。酩酊狙いで愛飲したい?(過剰飲酒を推奨するものではありません。)

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焼き鳥5本で480円。レバは他の串よりも先に供され、他の焼き物とは火の通り方が違います。焼き鳥といっていますが、豚もつも混ざっています。一本単位で頼むと100円なのですが、この立地にありこの雰囲気ならばお値打ちといえます。焼き方も丁寧ですしね。

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家族経営のパパ&ママショップならではのアットホームな心地よさが溢れている「にしきや」。地元の人が通う愛され酒場ですが、ぜひとも千代田線を通勤で利用されている方は途中下車して覗いてみて欲しいお店です。

店内が全面禁煙になっているのも、最近の飲兵衛さんにはポイント高いのではないでしょうか。

夏を味わう、暑い日に食べるはも鍋(1,600円)もおすすめです。
ごちそうさま。

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)

店名にしきや
住所東京都文京区千駄木3-34-7
営業時間営業時間
17:30~23:00
定休日
日・祝日
開業時期1952年