吉祥寺「いせや公園店」 私にとっていせやは学校でした

吉祥寺「いせや公園店」 私にとっていせやは学校でした

2015年2月13日

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東京住みたい街ランキングで安定の首位に選ばれ続けている吉祥寺。公園や商店街が魅力というコメントをよく見かけますが、本当は「いせや」があるからじゃないですかー?(笑)

というくらい、吉祥寺といえば「いせや総本店」でして、井の頭公園に隣接する公園店と、駅近くの本店はいつも早い時間から賑わっています。

焼鳥・焼きとんのお店で串は1本80円、瓶ビールや焼酎、日本酒、ホッピーなどを飲みながら串を楽しみます。サイドメニューの手づくりシューマイは常連さんは必ず頼む一品で、むしろ焼鳥よりもシューマイを目当てに来る人すらいるほど。

公園店は震災後に建て替えのため一時休業。2013年9月に新店舗で営業を再開し、いまも井の頭公園で遊ぶ人たちの定番呑み処となっています。

建て替えの基礎工事のときに石器時代の焼鳥台が発見され、それを聞いた人たちは、「いせや」って古いお店だけど、まさか石器時代から焼鳥屋だったとは…と思ったに違いありません(笑)

 

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建替え前は、一体なんの建物なのかわからないちぐはぐな構造で、小上がりは畳間があり、板間があり、大階段で二階に繋がり吹き抜けがあるなど、それはもう摩訶不思議な構造でしたが、現在は普通のキレイめな酒場となっています。

吉祥寺という土地柄か、客層は年配の飲兵衛さんはもちろんのこと、大学生くらいの女性や家族連れも多く、平然とした顔をして赤星と焼鳥を楽しむ光景が見られます。他の街ではこんな雰囲気滅多にありません。

井の頭公園を歩くと、明るい時間から缶ビールやワインのボトルを持ち込み宴会をする若者が年中みられるなど、吉祥寺はお酒好きが多いのかも?

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かく言う私も、いせや歴は長く、初めて来たのは2才位でしょうか。荻窪で幼少期を過ごしたので、井の頭公園は定番の散歩場所で、お散歩帰りのいせやを楽しみにしていたのを今も覚えています。

両親が飲んでいるビールに憧れ、成人になった私は、その憧れを実現しました。

当時の私は、「大人になったらいせやでお腹いっぱい焼鳥とビールを飲むんだ。一人で来れるようになりたい」
なんて思っていまして、酒場一人飲みを覚えたのもいせやでした。

カウンター席に座ると常連さんがかっこ良く飲んでいて、ときには酒場のマナーを教えてもらったこともありました。

学生時代の友人たちと二階の座敷で宴会をした日。買い物帰りに一人で飲んだ日。好きな人とデートで飲んだ日。いせやには思い出がつまっています。大衆酒場って、そんな一人ひとりの思い出がいっぱい詰まっているから、他にはない魅力があるのだと思います。

 

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綺麗になった公園店でも、これからたくさんの思い出を作っていけば、ここも新しい故郷になるに違いありません。

憧れのビール、今では毎日飲んでいるサッポロラガー大びんで乾杯です。
焼鳥はミックスで4本320円。いったいいつから値上げしていないのか、1本80円はすごい。

これにシューマイを追加すれば、私のいせや3点セットの完成です。サイドメニューは結構充実していて唐揚げや餃子、生姜焼きなどもあります。

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ビールを1本飲み終えたら、次は焼酎とタンサンをもらって焼酎ハイボールを楽しみます。メニューにはサワー類ものっていますが、自分で作るほうが私は好き。なぜって、いせやには梅エキスがあるんですよ。天羽飲料さんではないですが、琥珀色のシロップのようなもので、これを数滴たらして飲むのが美味しい。

タンサン1本で2杯分の焼酎ハイボールがつくれるので、飲みきったらもう一杯焼酎を。水差しからスーって注がれる焼酎はなんだかワクワクします。

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焼酎ハイボールでお腹がいっぱいになってきたら、次は焼酎をそのまま飲み始めます。こちらも梅エキスをいれて、「梅割り」にして飲むとバニラ香にも似た独特な風味がでて飲みが進みます。

甲類焼酎25度をストレート同然で飲むことになりますが、酒場で飲めばなんともいい感じなのです。

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軽くつまんであれこれと飲んでいい感じ。テーブル席で飲む人はあまり長いせずにサクっと次に梯子していきますが、いせやはそんなチョイ飲みに最適なお店なんですよね。井の頭公園に来たらいせやに寄らずに帰るのはちょっぴり寂しい、一杯だけ飲んでこうよ!みたいに。

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入ってすぐの焼き台横は新店舗はオーダースペースになっていますが、昔はここにカウンターがありました。その席は常連さんたちの止まり木のように使っていて、私も混ぜてもらっていました。注文もすぐに通るし、焼き場も見えるから楽しかったものです。

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同じ場所のカウンター席、思い出の風景がこちら。

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その後、建て替え寸前はこの通り、すでにオーダースペースとして使われていました。

 

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新店は大きなフロアになっていて広々開放感がありますが、昔は本当にチグハグでねー、懐かしいです。

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こちらが同じ場所の旧店舗の写真。天井の高さも公園店の魅力でした。

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お店は新しくなりましたが、憧れの赤星も、お小遣いを数えて買った焼鳥も、一人飲みを学んだこの雰囲気は今も変わってはいません。

これからも、いせやをずっと使い続けたいと思います。私の酒場学校通いに卒業はありません。

ごちそうさま。

 

(取材・文・撮影/塩見 なゆ)